中和滴定
ビュレットから標準溶液を1滴ずつ加えていくと、どこかで色が変わる。
実際のpH計算式から算出した滴定曲線で、中和滴定の仕組みと指示薬の選び方を、はじめての人から難関大志望者まで使えるレベルで理解しよう。
📍 単元5「酸と塩基」4/4ページ:① 酸と塩基 → ② pH → ③ 中和反応 → ④ 中和滴定(このページ)
中和滴定の原理
台所用洗剤のラベルに「中性」「弱アルカリ性」と書いてあるのを見たことはないだろうか。あの数値は、成分の酸性・塩基性の強さを正確に測る実験によって決められている。「濃さが分かっている溶液」を少しずつ加えていき、色の変化で「ちょうど中和した瞬間」を見極める実験操作が中和滴定だ。
濃度未知の酸(または塩基)に、濃度既知の標準溶液を少しずつ加えて中和点を求める操作が中和滴定。未知の濃度を正確に決定できる。
c₂: 塩基の濃度[mol/L] V₂: 塩基の体積[L] b: 塩基の価数
🧪 実験器具の役割
| 器具 | 役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| ビュレット | 標準溶液を少量ずつ滴下する | 0.1 mL単位で読み取れる;コックで量を制御 |
| コニカルビーカー | 試料溶液を入れる | 振り混ぜやすい形状 |
| ホールピペット | 試料溶液を正確に量り取る | 1点のみ(例:10.00 mL)の精密計量 |
| メスフラスコ | 標準溶液を正確な体積に調製する | 一定体積(例:100 mL)の精密調製 |
❌ よくある誤解
共洗いを忘れると、器具内に残った水で溶液が薄まり、濃度・体積の測定値に誤差が生じる。逆にメスフラスコを乾燥させる必要はなく、濡れたままで問題ない。
ガラス器具は熱で膨張・収縮するため、精密な体積を保証する目盛り付き器具は自然乾燥させる。
中和滴定に使う標準溶液自体の正確な濃度は、あらかじめ純度の高い基準物質(一次標準物質、例:シュウ酸)を用いた滴定によって決定しておく必要がある。NaOH水溶液は空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸ナトリウムを生じ濃度が変化しやすいため、そのままでは一次標準物質にできない、といった実務上の注意点も存在する。大学範囲(実験精度)
滴定曲線と指示薬の選択
塩基性の液を酸性の液に少しずつ加えていくと、最初はpHがゆっくりとしか変わらないが、中和点の直前でpHが一気にジャンプする。この「一気に変わる瞬間」をとらえるために、pHによって色が変わる指示薬を使う。滴下量とpHの関係をグラフにしたものが滴定曲線だ。
滴定中のpHの変化を表したグラフが滴定曲線。中和点でのpHによって適切な指示薬が異なる。以下は0.100 mol/Lの酸20.00 mLに0.100 mol/LのNaOHを滴下したときの、実際のpH計算式(水のイオン積・電離平衡)から算出した滴定曲線。
📉 滴定曲線(実測データ相当・計算値)
図1:0.100 mol/L・20.00 mLの酸に0.100 mol/LのNaOHを滴下したときのpH変化。水のイオン積(強酸-強塩基)と電離平衡の電荷均衡式(弱酸-強塩基, K_a=1.8×10⁻⁵の酢酸)から数値計算した曲線。当量点はいずれも滴下量20.00 mLだが、pHの値は異なる。
🎨 指示薬の変色域と選び方
| 滴定の組み合わせ | 当量点のpH | 適切な指示薬 |
|---|---|---|
| 強酸 + 強塩基(例:HCl+NaOH) | ≈ 7 | フェノールフタレイン(変色域8.3〜10.0) または メチルオレンジ(変色域3.1〜4.4) |
| 弱酸 + 強塩基(例:CH₃COOH+NaOH) | > 7(塩基性、計算例では約8.7) | フェノールフタレイン(塩基性域で変色) |
| 強酸 + 弱塩基(例:HCl+NH₃) | < 7(酸性) | メチルオレンジ(酸性域で変色) |
❌ よくある誤解
グラフで見ると、弱酸-強塩基の曲線は当量点付近でも強酸-強塩基ほど鋭く垂直に立ち上がらず、かつ当量点のpHの位置そのものが塩基性側にずれている。指示薬は当量点のpHの位置に変色域が重なるものを選ぶ必要がある。
「当量点」は滴下量(横軸)で決まる概念で、そのときのpH(縦軸の値)は反応物の強弱によって7だったり7からずれたりする。この2つを混同しないこと。
弱酸-強塩基の滴定曲線において、当量点の半分だけ塩基を加えた点(半当量点)では、[CH₃COOH]=[CH₃COO⁻]となり、pH=pK_a(この場合は約4.74)になる。この関係はヘンダーソン・ハッセルバルヒの式 pH = pK_a + log([A⁻]/[HA]) から導かれ、この付近では加える塩基の量を変えてもpHがあまり変化しない緩衝作用が見られる。大学範囲(緩衝液・ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式)
✅ この単元のまとめ
- 中和滴定:濃度既知の標準溶液を使って未知濃度を求める操作。共洗いは必須、加熱乾燥は厳禁
- 計算式:c₁V₁a = c₂V₂b(H⁺のmol = OH⁻のmol)
- 強酸-強塩基:当量点pH≈7 → フェノールフタレイン・メチルオレンジどちらも可
- 弱酸-強塩基:当量点pH>7(加水分解による) → フェノールフタレイン
- 強酸-弱塩基:当量点pH<7 → メチルオレンジ
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