溶液の濃度
食塩水の濃度「5%」と「1.0 mol/L」は何が違う?水で薄めても溶質の量は変わらない、というのはどういうこと?
質量パーセント濃度とモル濃度の意味・計算・希釈を、はじめての人から難関大志望者まで使えるレベルで整理しよう。
📍 単元4「物質量と化学反応式」3/3ページ:① 物質量(mol) → ② 化学反応式と量的関係 → ③ 溶液の濃度(このページ)
質量パーセント濃度
スポーツドリンクのラベルに「食塩相当量」が書いてあるように、私たちは日常的に「濃さ」を重さの割合で表す場面によく出会う。100 gの食塩水の中に食塩が5 g溶けていれば「5%の食塩水」——これが質量パーセント濃度の考え方。
溶液中の溶質の割合を質量で表した濃度が質量パーセント濃度。食品や薬品のラベルでよく使われる。
🧮 計算例
食塩(NaCl)20 gを水80 gに溶かした食塩水の質量パーセント濃度は?
w = 20 / (20 + 80) × 100 = 20 / 100 × 100 = 20%
❌ よくある誤解
先の例で言えば、20/80×100=25%ではなく、20/(20+80)×100=20%が正しい。分母を溶媒だけにする間違いは非常に多い。
5%の食塩水(NaCl, モル質量58.5)と5%のブドウ糖水溶液(モル質量180)では、同じ重さの溶質が溶けていても、molで数えた粒子の個数はまったく違う。
質量パーセント濃度は溶液の温度によって値が変わらない(質量は温度で変化しない)という利点がある一方、化学反応の量的計算には直接使いにくい(molに変換する手間が必要)という欠点がある。実験室では、体積を測るだけで溶質のmol数がわかる次の「モル濃度」の方が、化学計算では圧倒的によく使われる。
モル濃度と希釈
カルピスの原液を水で薄めるとき、味は薄くなるが、コップの中に入っているカルピスの「成分そのものの量」は薄める前後で変わらない——ただ水で薄まって広がっただけだ。これが「希釈」の考え方。化学の実験でも、濃い溶液を水で薄めて使いたい濃度の溶液を作ることがよくある。
モル濃度 c[mol/L]は、溶液1 L中に溶けている溶質の物質量。化学計算で最もよく使われる濃度。
図1:質量パーセント濃度からモル濃度への変換手順と公式。
🧮 計算例:質量%→モル濃度
36%の塩酸(密度1.18 g/cm³、HClの式量36.5)のモル濃度は?
c = 10 × 1.18 × 36 / 36.5 = 424.8 / 36.5 ≈ 11.6 mol/L
💧 希釈の計算
水を加えて溶液を薄めても、溶質のmol数は変わらない(水は溶質を増減させない)。この関係から次の式が成り立つ。
例:2.0 mol/Lの塩酸50 mLを水で薄めて0.50 mol/Lにするには、全体を何mLにすればよいか?
2.0 × 50 = 0.50 × V₂ → V₂ = 200 mL(つまり水を150 mL加える)
❌ よくある誤解
水を加えても溶質の粒子が消えたり増えたりするわけではない。「粒子の数は同じだが、広い体積に散らばるので、1 Lあたりの数(モル濃度)が減る」とイメージするとよい。
先の例では、V₂=200 mLは「薄めた後の溶液全体の体積」。加える水の量を求めるには、そこから元の体積V₁=50 mLを引く必要がある(200−50=150 mL)。
c = 10ρw/Mの式は、溶液1 Lの質量が1000ρ[g](ρ: 密度[g/cm³])であることと、質量パーセント濃度の定義を組み合わせて導出できる。密度ρは温度によってわずかに変化するため、精密なモル濃度は測定温度によって微妙に異なる値になる。この温度依存性は、化学(専門科目)の溶液論でより詳しく扱う。大学範囲(温度依存性)
✅ この単元のまとめ
- 質量パーセント濃度 w% = 溶質質量 / 溶液質量 × 100(分母は溶媒ではなく溶液)
- モル濃度 c[mol/L] = n / V(n: 溶質のmol、V: 溶液の体積[L])。溶質のmol = c × V
- 変換公式:c = 10ρw / M(ρ: 密度、w: 質量%、M: モル質量)
- 希釈前後で溶質のmolは変わらない:c₁V₁ = c₂V₂(V₁・V₂は溶液全体の体積)
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