物質量(mol)
原子1個はあまりに小さく数えられない。だから6.02×10²³ 個をひとまとめにした「mol」という単位で扱う。
原子量・分子量から物質量、質量、体積への変換を、はじめての人から難関大志望者まで使えるレベルで整理しよう。
単元マップ:物質量と化学反応式
この単元は3ページに分かれている。まず原子量からmol(このページ)を学び、次にmolを使って化学反応式の量的関係を計算し、最後に溶液の濃度にmolを応用する、という流れで理解しやすい。
図0:単元4は3つのページ(物質量mol・化学反応式と量的関係・溶液の濃度)で構成される。緑と紫のボックスをクリックすると次のページへ進める。
原子量・分子量・式量
原子1個の重さは、グラムで表すととんでもなく小さい数字になってしまい扱いにくい。そこで化学では、炭素原子を基準にした「相対的な重さ」である原子量を使う。分子や、NaClのようなイオンでできた物質についても、同じ考え方で「分子量」「式量」という重さの目安がある。
原子量は¹²C(炭素12)の質量を12と定めたときの、各原子の相対的な質量。分子量は分子を構成する原子の原子量の総和、式量はイオン結晶・金属など分子を作らない物質の組成式に含まれる原子量の総和。
⚖️ 原子量→分子量・式量の計算例
| 物質 | 種類 | 計算 | 値 |
|---|---|---|---|
| H₂O(水) | 分子量 | H(1.0)×2 + O(16.0)×1 | 18.0 |
| CO₂(二酸化炭素) | 分子量 | C(12.0)×1 + O(16.0)×2 | 44.0 |
| NaCl(塩化ナトリウム) | 式量 | Na(23.0)×1 + Cl(35.5)×1 | 58.5 |
| CaCO₃(炭酸カルシウム) | 式量 | Ca(40.0) + C(12.0) + O(16.0)×3 | 100.0 |
原子量は元素ごとに決まった概数値(H=1.0, C=12.0, O=16.0, Na=23.0, Cl=35.5, Ca=40.0 など)を用いる。
❌ よくある誤解
「水の分子量は18」であって「18g」ではない。質量の単位が付くのは、次のトピックで学ぶ「モル質量[g/mol]」になってから。
単元3で学んだ通り、イオン結晶には「分子」という単位が存在しない。組成式(NaClなど)をもとにした重さの目安なので「式量」と呼ぶ。日常的には混同されることもあるが、正式には区別する。
単元2で学んだ通り、実際の原子量は天然に存在する同位体の存在比を加味した加重平均値である。そのため周期表に載っている精密な原子量(例:塩素35.45)と、高校化学の計算で使う概数値(塩素35.5)は微妙に異なる。計算問題では通常、概数値を使ってよいが、精密な値が与えられた場合はその値を使う。大学範囲(精密値の利用)
mol(物質量)の概念
「1ダース=12個」「1束=100枚」のように、ものをまとめて数える単位がある。原子や分子は1個1個があまりに小さいので、化学では「6.02×10²³個」という途方もない数をひとまとめにして1 mol(モル)と呼ぶ。この基準になる数をアボガドロ定数という。
1 molの水(H₂O)は水分子6.02×10²³個分で、重さにするとちょうど18 g、というように、molを使うと「個数」「重さ」「(気体なら)体積」をスムーズに行き来できる。
原子・分子・イオンは非常に小さく、1個ずつ数えることは不可能。そこで6.02×10²³個をまとめて1 mol(モル)という単位で扱う。この数をアボガドロ定数 NAという。
図1:物質量 n を中心にした変換図。中心から外へ「× 変換係数」、外から中心へ「÷ 変換係数」。
❌ よくある誤解
「水素原子1 mol」「電子2 mol」のように、対象がどんな粒子であっても6.02×10²³個を1 molとして数える。
1 molの水は18 g、1 molのNaClは58.5 g。「個数」は同じ(6.02×10²³個)でも「重さ」は物質ごとに違う。
2019年のSI(国際単位系)改定により、アボガドロ定数は実測値ではなく6.02214076×10²³ /molという正確な定義値になった。これに伴い、molの定義も「¹²C 12 gに含まれる原子の数」という物質依存の定義から、アボガドロ定数を固定値とする定義に変更された。高校化学では引き続き6.02×10²³という概数値を使えばよい。大学範囲・SI単位系の定義
モル質量とモル体積
面白いことに、種類の違う気体でも、同じ温度・圧力条件なら1 molあたりの体積はどれも同じになる。水素1 molも、二酸化炭素1 molも、0℃・1気圧では同じ22.4 Lを占める。粒子の種類によらず「molという個数」で体積が決まるという、直感に反する面白い性質だ。
モル質量 M[g/mol]は、物質1 molあたりの質量。原子量・分子量・式量の数値がそのままモル質量[g/mol]になる。標準状態(0℃・1気圧)の気体は、種類によらず1 molで22.4 Lを占める(モル体積)。
🔢 mol計算の例
| 物質 | モル質量M | 計算例 | 答え |
|---|---|---|---|
| H₂O(水) | 18 g/mol | 36 gの水は何mol? n = 36/18 | 2.0 mol |
| NaCl(塩化Na) | 58.5 g/mol | 1.0 molのNaClは何g? m = 1.0×58.5 | 58.5 g |
| CO₂(気体・標準状態) | 44 g/mol | 22.4 LのCO₂は何mol? n = 22.4/22.4 | 1.0 mol |
| Na(ナトリウム) | 23 g/mol | 0.5 mol中の原子数は? N = 0.5×6.02×10²³ | 3.01×10²³個 |
❌ よくある誤解
液体・固体は粒子どうしが密着しているため体積は物質ごとの密度で決まり、molの数だけでは体積が決まらない。
常温・常圧(25℃・1気圧)ではおよそ24 L/molになる。問題文の条件(標準状態かどうか)を必ず確認する。
モル体積が気体の種類によらず一定になるという性質は、理想気体の状態方程式 PV = nRT(P: 圧力, V: 体積, n: 物質量, R: 気体定数, T: 絶対温度)から導かれる。実在の気体は分子自身の体積や分子間力の影響でこの式から少しずれる(実在気体)が、高校化学基礎で扱う範囲では理想気体として近似してよい。大学範囲(状態方程式)
✅ この単元のまとめ
- 原子量:¹²C=12を基準にした相対質量。分子量:分子中の原子量の総和。式量:組成式中の原子量の総和(イオン結晶など)
- 1 mol = 6.02×10²³個(アボガドロ定数 N_A)。molはあらゆる粒子の個数を数える単位
- 物質量 n = N / N_A = m / M = V / 22.4(気体・標準状態)
- モル質量 M[g/mol] = 原子量・分子量・式量の数値にそのまま単位を付けたもの
- 標準状態(0℃, 1 atm)の気体1 molは、種類によらず22.4 Lを占める
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