化学反応式と量的関係
2H₂ + O₂ → 2H₂O の係数「2:1:2」は、そのままmolの比に対応している。
化学反応式を使った量的計算の手順と、過不足がある場合の考え方を、はじめての人から難関大志望者まで使えるレベルで学ぼう。
📍 単元4「物質量と化学反応式」2/3ページ:① 物質量(mol) → ② 化学反応式と量的関係(このページ) → ③ 溶液の濃度
化学反応式と係数の意味
プラモデルの組み立てで「タイヤ4個とボディ1個で車1台」と決まっているように、化学反応にも「この物質が何個とこの物質が何個で、これが何個できる」という決まった比率がある。水素と酸素が結びついて水ができる反応では、水素分子2個と酸素分子1個から水分子2個ができる。この比率をmol単位で表したのが化学反応式の係数だ。
化学反応式の係数の比 = 物質量(mol)の比。気体同士の反応では体積比にもなる。これを使えば、ある物質の量から別の物質の量を計算できる。
図1:2H₂ + O₂ → 2H₂O の量的関係。係数比=mol比、質量の総和は反応前後で等しい。
📐 化学反応式の書き方(手順)
- 反応物と生成物の化学式を書く
- 各元素の原子数が左辺と右辺で等しくなるよう係数を整える(最小整数比)
- 電荷のある粒子が含まれる場合は電荷も保存されることを確認
❌ よくある誤解
2H₂+O₂→2H₂Oは「分子2個+分子1個→分子2個」でもあり「2 mol+1 mol→2 mol」でもある。両方とも同時に正しい。
2H₂とO₂の係数比は2:1だが、質量比は(2×2):(1×32)=4:32=1:8になる。分子の重さが違うため、個数の比と重さの比は一致しない。
質量保存の法則は1774年にフランスの化学者ラボアジエが実験(密閉容器内でのスズの燃焼)によって確立した、化学の基礎法則の一つである。原子はどんな化学反応でも新たに生まれたり消えたりせず、組み合わせが変わるだけ(原子の組み替え)なので、反応の前後で原子の種類と数の総和は変わらず、結果として質量の総和も変わらない。
量的計算と過不足
プラモデルの例で言うと、タイヤが400個・ボディが80個あっても、車は最大80台しか作れない(タイヤは320個余る)。ボディの数が「足りない方」として全体の生産数を決めてしまう。化学反応でも同じで、2つの反応物の量に過不足がある場合、少ない方(不足する方)を基準にして、できる生成物の量が決まる。
係数比を使えば、一方の物質の量から他の物質の量を求められる。「molに変換 → 係数比で対応 → 求める単位に変換」の3ステップが基本。反応物の量に過不足がある場合は、不足する方(少ない方)を基準に計算する。
🧮 計算例:N₂ + 3H₂ → 2NH₃
問:N₂を14 g用意した。生成できるNH₃は最大何gか?(Nの原子量14, Hの原子量1)
- N₂のモル質量 = 14×2 = 28 g/mol → 14 gは n = 14/28 = 0.50 mol
- 係数比 N₂:NH₃ = 1:2 → NH₃は 0.50×2 = 1.0 mol
- NH₃のモル質量 = 14+3 = 17 g/mol → 1.0×17 = 17 g
📉 過不足がある反応の計算例:N₂ + 3H₂ → 2NH₃
問:N₂ 2.0 molとH₂ 3.0 molを反応させた。どちらが何mol余るか?
- 係数比どおりに過不足なく反応するには、N₂ 2.0 molに対しH₂は 2.0×3 = 6.0 mol必要
- 実際のH₂は3.0 molしかない → H₂が不足している
- H₂ 3.0 molをすべて使うために必要なN₂は 3.0÷3 = 1.0 mol
- 用意したN₂は2.0 molなので、N₂は 2.0−1.0 = 1.0 mol余る
❌ よくある誤解
N₂ 2.0 molとH₂ 3.0 molでは、単純な数字はH₂の方が大きいが、係数比(1:3)で必要な量と比べるとH₂の方が不足している。数字の大小だけで判断しないこと。
入試では生成物の量だけでなく、反応後に残っている未反応の物質の量を問われることも多い。
過不足のある反応で「不足する方」の反応物は、化学(専門科目)や大学化学では限定試薬(limiting reagent)と呼ばれる。工業プロセスや研究室での合成では、目的物をできるだけ多く・むだなく得るために、あえて片方の試薬を過剰に加えて、高価な試薬や目的とする反応経路を優先させる限定試薬にすることがある。大学範囲(用語)
✅ この単元のまとめ
- 化学反応式の係数比 = 物質量(mol)の比 = 気体の体積比。ただし質量比とは異なる(モル質量をかける必要がある)
- 質量保存の法則:反応前後で全体の質量は変わらない(ラボアジエ, 1774年)
- 計算手順:molに変換 → 係数比を適用 → 目的の単位へ変換
- 過不足がある場合:mol数の大小ではなく、係数比で必要な量と比べて不足する方を基準に計算する
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