原子の構造
原子はどんな粒子からできている?同じ元素なのに質量が違う同位体とは?
原子の内部構造と同位体・原子量の概念を、はじめての人から難関大志望者まで使えるレベルで学ぼう。
単元マップ:物質の構成粒子
この単元は3ページに分かれている。まず原子そのものの中身(このページ)を学び、次にその原子が電子をやり取りしてイオンになるしくみを学び、最後にすべての原子を一覧できる周期表に進むと理解しやすい。
図0:単元2は3つのページ(原子の構造・電子配置とイオン・周期表と元素の性質)で構成される。緑と紫のボックスをクリックすると次のページへ進める。
原子の構成粒子
身の回りのすべてのもの——空気中の酸素も、水を作る水素も、体の中の炭素も——は、目に見えないほど小さな「原子」という粒でできている。その原子自体も、実はさらに小さな3種類の粒(陽子・中性子・電子)からできている。
原子を野球場に例えると、中心のマウンドにあたる部分(原子核)に陽子と中性子がぎゅっと集まっていて、そのはるか外側を電子がものすごい速さで飛び回っているイメージ。原子のほとんどは、実はスカスカの空間でできている。
原子は中心の原子核(陽子+中性子)と、その周りを運動する電子からなる。陽子の数が元素の種類を決める。
⚛️ 3つの粒子の比較
| 粒子 | 記号 | 電荷 | 相対質量 | 場所 |
|---|---|---|---|---|
| 陽子 | p | +1 | 1 | 原子核内 |
| 中性子 | n | 0 | 1 | 原子核内 |
| 電子 | e⁻ | −1 | 約 1/1840 | 核外(電子殻) |
🧪 身近な原子の例
- 水素原子 H(原子番号1):最も軽い原子。陽子1個のみで中性子を持たない(¹H)ものが大部分
- 酸素原子 O(原子番号8):呼吸で吸う酸素分子O₂を構成。陽子8・中性子8が主
- 炭素原子 C(原子番号6):体を作るタンパク質・DNAの骨格。陽子6・中性子6が主
❌ よくある誤解
そのため化学反応で原子の質量を考えるときは、電子の質量は無視して差し支えないことが多い。
同じ原子番号(同じ元素)でも中性子数が異なれば質量数は変わる。これが次の「同位体」の考え方につながる。
図1:炭素原子の構造。原子核に陽子6個・中性子6個が集まり、まわりをK殻2個・L殻4個の電子が取り囲む。
電子は「粒」としてだけでなく「波」としての性質も持つ(電子の波動性)。そのため電子殻モデルのように電子を決まった軌道を回る粒子として描くのは便宜的な説明であり、実際には電子がどこにいるかは確率(電子雲)でしか表せない。この量子力学的な扱いは大学の物理化学で学ぶ。大学範囲
同位体と原子量
同じ「水素」でも、実はほんの少しだけ重いタイプが自然界にわずかに存在する。これが「同位体」。双子のきょうだいのようなもので、名字(元素の種類)は同じだけど、体重(質量)がわずかに違うとイメージするとわかりやすい。
遺跡や化石の年代を調べる「炭素年代測定」は、この同位体の性質(一定の速さで数が減っていく)を利用した技術だ。
原子番号が同じで質量数が異なる原子を同位体(アイソトープ)という。天然の元素は複数の同位体が一定の割合で混在しており、その平均を原子量という。
図2:炭素の同位体 ¹²C と ¹³C。陽子数(=電子数)は同じで、中性子数が1個異なる。
🧮 原子量の計算例(塩素 Cl)
天然の塩素:³⁵Cl(75.77%)と³⁷Cl(24.23%)の2種の同位体が存在。
原子量 = 35 × 0.7577 + 37 × 0.2423 = 26.52 + 8.97 ≈ 35.5
炭素12(¹²C)の質量を12と定義し、これを基準にした相対値が原子量。
📋 主要元素の同位体の例
| 元素 | 同位体 | 天然存在比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 水素 H | ¹H / ²H(重水素D)/ ³H(三重水素T) | 99.98% / 0.016% / 微量 | ³H は放射性 |
| 炭素 C | ¹²C / ¹³C / ¹⁴C | 98.9% / 1.1% / 約1兆分の1 | ¹⁴C は放射性;半減期約5730年で年代測定に使用 |
| 塩素 Cl | ³⁵Cl / ³⁷Cl | 75.8% / 24.2% | 原子量 ≈ 35.5 |
❌ よくある誤解
元素の種類を決めるのは陽子数だけ。中性子数が違っても、陽子数(=原子番号)が同じなら同じ元素として扱う。
質量数(¹²C, ³⁵Clなど)は個々の原子1個についた整数のラベル。原子量はその元素全体の平均値であり、混同しないよう注意。
¹⁴Cのような不安定な原子核が放射線を出しながら別の原子核に変わっていく現象を放射性壊変という。壊変は指数関数的に進み、量が半分になるまでの時間(半減期)が核種ごとに一定であることが年代測定の理論的な土台になっている。放射性壊変の種類(α壊変・β壊変など)や核反応式は大学の範囲でより詳しく扱う。大学範囲
✅ この単元のまとめ
- 原子核 = 陽子(+)+中性子(0);核外に電子(−)。電子の質量は陽子・中性子の約1/1840
- 原子番号 Z = 陽子数 = 電子数(中性原子);質量数 A = Z + 中性子数 N
- 同位体:原子番号(陽子数)が同じで質量数が異なる原子。化学的性質はほぼ同じ
- 原子量:天然の同位体存在比を考慮した相対的な平均質量(¹²C=12を基準)
- 放射性同位体(¹⁴Cなど)は半減期に従って一定の割合で減少するため、年代測定に利用できる
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