電子配置とイオン
電子は原子の中でどのように配置されている?NaがNa⁺になるのはなぜ?
電子殻とイオン生成の仕組みを、はじめての人から難関大志望者まで使えるレベルで理解しよう。
📍 単元2「物質の構成粒子」2/3ページ:① 原子の構造 → ② 電子配置とイオン(このページ) → ③ 周期表と元素の性質
電子殻と電子配置
マンションの部屋割りをイメージしてみよう。原子核の周りにある電子の「部屋」は内側から順に埋まっていき、1階(K殻)には2部屋、2階(L殻)には8部屋しかない。電子はこの部屋割りのルールに従って、内側の階から順番に入っていく。
一番外側の階にいる電子(価電子)が、その原子の"性格"——他の原子とどうくっつきやすいか——を決める、いちばん重要な電子になる。
電子は核の周りにある電子殻(K, L, M, …)に内側から順に入る。最外殻の電子数(価電子)が元素の化学的性質を支配する。
🔢 各電子殻の収容定員と主な元素の電子配置
| 元素 | 原子番号 | K殻(最大2) | L殻(最大8) | M殻(最大8*) | 価電子数 |
|---|---|---|---|---|---|
| H | 1 | 1 | — | — | 1 |
| He | 2 | 2 | — | — | 0(貴ガス) |
| Li | 3 | 2 | 1 | — | 1 |
| C | 6 | 2 | 4 | — | 4 |
| N | 7 | 2 | 5 | — | 5 |
| O | 8 | 2 | 6 | — | 6 |
| Ne | 10 | 2 | 8 | — | 0(貴ガス) |
| Na | 11 | 2 | 8 | 1 | 1 |
| Cl | 17 | 2 | 8 | 7 | 7 |
| Ar | 18 | 2 | 8 | 8 | 0(貴ガス) |
*M殻は最大18個収容できるが、第3周期元素では最大8個入った段階で次の殻へ移る
❌ よくある誤解
電子殻がいくつあっても、最外殻に空きがあれば不安定。貴ガスのように最外殻がきっちり埋まっている状態が最も安定。
貴ガス(He以外は価電子8個)は価電子数が多いのに最も反応しにくい。価電子1個のアルカリ金属も、価電子7個のハロゲンも、どちらも反応性が高いのは「電子を1個やり取りすれば貴ガス配置に到達できるから」という共通の理由による。
ここまでの電子殻(K, L, M…)による説明は、高校化学で使う簡略化されたモデルである。実際には電子は「軌道(s軌道・p軌道・d軌道…)」という、より細かく区分けされたエネルギー準位に入る。例えばM殻は本来18個まで電子が入れるが、第3周期の元素ではM殻のd軌道にはまだ電子が入らず、先にN殻(第4周期のs軌道)に電子が入り始める。この「軌道」に基づく詳しい電子配置の考え方は化学(専門科目)・大学の範囲で学ぶ。大学範囲
イオンの生成
食卓塩(塩化ナトリウム)は、ナトリウム原子が電子を1個手放し、塩素原子がその電子を1個受け取ることで、それぞれ電気を帯びた粒(イオン)になってできている。プラスの電気を帯びた粒とマイナスの電気を帯びた粒が、磁石のS極とN極のように引き合ってくっついているイメージだ。
電子を失うとプラスの電気を帯びた「陽イオン」に、電子を受け取るとマイナスの電気を帯びた「陰イオン」になる。
原子が電子を失うと陽イオン(正の電荷)、電子を得ると陰イオン(負の電荷)になる。いずれも貴ガスと同じ電子配置になることで安定化する。
図1:Na が電子を1個失って Na⁺(Ne と同じ配置)に、Cl が電子1個を得て Cl⁻(Ar と同じ配置)になる。
🔬 多原子イオンの例
| イオン式 | 名称 | イオン式 | 名称 |
|---|---|---|---|
| OH⁻ | 水酸化物イオン | NH₄⁺ | アンモニウムイオン |
| SO₄²⁻ | 硫酸イオン | NO₃⁻ | 硝酸イオン |
| CO₃²⁻ | 炭酸イオン | HCO₃⁻ | 炭酸水素イオン |
❌ よくある誤解
イオン化で変わるのは主に電荷と大きさ(半径)。陽イオンは電子を失って原子より小さくなり、陰イオンは電子を得て原子より大きくなる。
「イオン化で貴ガス配置に近づく」のは大きな傾向としては正しいが、絶対的なルールではない点に注意(遷移金属は発展的な内容)。
イオン化に必要なエネルギーは「イオン化エネルギー」と呼ばれ、原子から電子を1個ずつ取り去るたびに段階的に測定できる(第一イオン化エネルギー、第二イオン化エネルギー…)。閉殻構造を壊す段階で必要なエネルギーが急激に跳ね上がることが実験的にも確認されており、これが「Naはなぜ+2価にならないか」の実測的な裏付けになっている。イオン化エネルギーの詳しい傾向は次のページ(周期表と元素の性質)で扱う。
✅ この単元のまとめ
- 電子殻 K→L→M の順に内側から電子が入る(K:2, L:8, M:最大8で次の殻へ)
- 最外殻の電子数 = 価電子数(貴ガスは0と数える)。安定性は殻の数ではなく最外殻が満員かどうかで決まる
- 陽イオン:電子を失う(Na → Na⁺);陰イオン:電子を得る(Cl → Cl⁻)。質量はほぼ変化しない
- イオン化で貴ガスと同じ電子配置になり安定化する(典型元素の場合)
- 多原子イオン:OH⁻, SO₄²⁻, NH₄⁺ など複数原子が結合したイオン
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