反応速度
反応が速い・遅いを決めるのは何?速度式と活性化エネルギー、触媒の役割を実際の計算グラフで理解しよう。
反応速度と速度式
鉄はゆっくり錆びるが、花火はあっという間に燃え尽きる。どちらも酸素と結びつく反応(酸化)なのに、進む速さは全く違う。この「反応の速さ」を数値で表したものが反応速度である。
反応速度は、温度を上げる(お湯の方が氷砂糖が速く溶ける)、濃度を濃くする、細かく砕いて表面積を増やす(角砂糖より粉砂糖の方が速く溶ける)、といった条件で変化する。これらの条件がなぜ速度に影響するのかを、粒子どうしの衝突という視点で理解していく。
反応速度は単位時間あたりの反応物の濃度減少または生成物の濃度増加で表す。速度式 v = k[A]m[B]n で表され、k は速度定数(温度のみに依存)、m, n は反応次数(実験から求める)。
📊 反応速度に影響する因子
| 因子 | 影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 温度上昇 | 速度が大幅に増加 | 粒子の運動エネルギーが増加し、活性化エネルギーを超える衝突頻度が増える |
| 濃度増加 | 速度が増加 | 単位体積あたりの粒子数が増え、有効衝突の頻度が増える |
| 触媒の添加 | 速度が増加 | 活性化エネルギーを下げることで、より多くの粒子が反応できる |
| 表面積の増加 | 不均一系で速度増加 | 反応する界面の面積が広くなる(例:鉄粉 vs 鉄板) |
📉 一次反応の濃度変化(計算例)
図1:一次反応(v=k[A])における反応物濃度[A]の時間変化。[A] = [A]₀e^(−kt) の式から実際に計算した値をプロット(k=0.020/s, [A]₀=1.0 mol/L)。半減期(濃度が半分になる時間)は t₁/₂=ln2/k≈34.7秒で一定になる。
❌ よくある誤解
多段階反応では最も遅い段階(律速段階)の反応式が速度式を決めるため、全体の反応式の係数とは無関係になることが多い。
v=k[A]で[A]が2倍になればvは2倍になるが、これはkが変わったのではなく、kという「同じ比例定数」に大きい[A]をかけた結果である。
反応次数がすべて1である反応(一次反応)では、v=k[A]という式から微分方程式 d[A]/dt=−k[A] が導かれ、これを解くと [A]=[A]₀e^(−kt) という指数関数的な濃度減少が得られる。この式の特徴は、半減期 t₁/₂=ln2/k が初濃度に依存せず常に一定になることで、放射性崩壊(物理)とも共通する数学的構造である。大学範囲
活性化エネルギーと触媒
紙は酸素の中に置いておくだけでは燃えないが、マッチの火を近づけると燃え始める。これは、反応を始めるには乗り越えなければならない「エネルギーの壁」があるからだ。この壁を活性化エネルギーという。
大根おろしや、うがい薬に含まれる酵素・触媒は、この壁の高さを下げてくれる働きがある。例えば過酸化水素水(オキシドール)に生の肉片(カタラーゼという酵素を含む)を入れると、酸素の泡が勢いよく発生する。これは触媒が壁を低くして反応を起こりやすくしているためだ。
活性化エネルギー Ea は反応を起こすために越えなければならないエネルギーの山(ポテンシャル障壁)。触媒はこの山の高さを下げ、反応速度を増加させる。触媒自身は反応の前後で変化しない。
図2:活性化エネルギーとエネルギー図。触媒は活性化エネルギーを下げるが、反応エンタルピー ΔH は変わらない。
❌ よくある誤解
触媒は正反応・逆反応どちらの活性化エネルギーも同じだけ下げるため、正逆の速度バランス(平衡定数)には影響しない。「速く平衡に到達させる」のが触媒の役割。
Eaは「反応が始まるまでの壁の高さ」、ΔHは「反応物と生成物のエネルギー差」で、エネルギー図の別々の部分を表している。
速度定数kの温度依存性はアレニウス式 k = Ae^(−Ea/RT) で表される(A:頻度因子、R:気体定数、T:絶対温度)。両辺の対数をとると ln k = ln A − (Ea/R)×(1/T) となり、ln k を 1/T に対してプロットすると傾き −Ea/R の直線になる。大学範囲・入試頻出
📈 アレニウスプロット(計算例)
図3:仮の値(Ea=75 kJ/mol, A=5.0×10¹²/s)を用いてk=Ae^(−Ea/RT)から計算したln k。1/Tに対して直線になり、傾きは計算上−Ea/R=−9021 K(実際に回帰計算した傾きと完全に一致)。この直線の傾きからEaを実験的に求めることができる。
✅ この単元のまとめ
- 反応速度 v = k[A]ᵐ[B]ⁿ(k:速度定数、m, n:実験から決定)
- 速度定数 k は温度に依存(高温 → k 大 → 速い)が、濃度には依存しない
- 一次反応:[A]=[A]₀e^(−kt)。半減期t₁/₂=ln2/kは初濃度に依らず一定
- アレニウス式:k = Ae^(−Ea/RT)(ln kと1/Tの傾きから実験的にEaを求められる)
- 活性化エネルギー Ea:反応が起こるために必要なエネルギーの壁
- 触媒:Ea を下げ速度を増大させる(ΔH・平衡定数は変わらない)
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