電池
酸化還元反応をどうやって電気に変える?電池の原理をダニエル電池・鉛蓄電池・燃料電池で理解しよう。
電池の原理とダニエル電池
リモコンや懐中電灯に入れる乾電池は、使い切ったら捨てるしかない(一次電池)。一方、スマートフォンやノートパソコンのバッテリーは、何度も充電して繰り返し使える(二次電池)。この違いは、電池の中で起きている化学反応が「一方通行」か「逆向きにも進められる」かの違いによる。
そもそも電池は、金属が電子を放出したり受け取ったりする反応(酸化還元反応)を利用して、化学エネルギーを電気エネルギーに変えている装置。イオン化傾向の異なる2種類の金属を組み合わせることで、電子の流れ(電流)を作り出している。
電池は酸化還元反応のエネルギーを電気エネルギーに変換する装置。負極で酸化(電子を放出)、正極で還元(電子を受け取る)が起こる。ダニエル電池は亜鉛と銅を用いた典型的な電池で、電池の基本原理を学ぶのに最適。
図1:ダニエル電池の模式図。負極の Zn が溶解して電子を外部回路へ送り、正極で Cu²⁺ が還元されて Cu が析出する。
⚡ 電池の基本用語
| 用語 | 定義・説明 |
|---|---|
| 負極 | 酸化が起こる極(電子を放出・電流は正極から流れ込む) |
| 正極 | 還元が起こる極(電子を受け取る) |
| 塩橋 | 両槽の電荷バランスを保つためにイオンが移動する通路 |
| 起電力 [V] | 電池が生み出す電位差(正極と負極の標準電極電位の差) |
| 一次電池 | 放電のみ(充電不可)。マンガン電池・アルカリ乾電池 |
| 二次電池 | 充放電を繰り返せる。鉛蓄電池・リチウムイオン電池 |
❌ よくある誤解
「導線の中=電子が移動」「電解液・塩橋の中=イオンが移動」と、電荷の運び手を区別して覚える。
電流の向きの定義は電子が発見される前に決められた歴史的経緯によるもので、電子の流れとは逆になる。
電池の起電力は、正極と負極それぞれの標準電極電位 E°(水素電極を基準0Vとした電位)の差で求められる:起電力 = E°(正極) − E°(負極)。大学範囲・入試頻出
| 半反応 | 標準電極電位 E° |
|---|---|
| Zn²⁺ + 2e⁻ → Zn | −0.76 V |
| Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu | +0.34 V |
ダニエル電池の起電力 = E°(Cu²⁺/Cu) − E°(Zn²⁺/Zn) = 0.34 − (−0.76) = 1.10 V。これは実測値ともよく一致する。
鉛蓄電池と燃料電池
自動車のエンジンをかけるときに使われるバッテリーは、100年以上前から使われている鉛蓄電池という電池。重くてかさばるが、大きな電流を安定して取り出せるため今でも自動車用として広く使われている。使うと電圧が下がるが、車の発電機で充電すればまた使える。
一方、水素と酸素を反応させて電気を作る燃料電池は、ロケットや燃料電池自動車(FCV)などで使われている。排出されるのは水だけというクリーンな発電方法として注目されている。
鉛蓄電池は充放電を繰り返せる二次電池の代表例。放電時には Pb と PbO₂ が反応し PbSO₄ を生成。充電時は逆方向に電極反応が進む。燃料電池は水素と酸素を反応させ水を生成する際の化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する。
🔋 鉛蓄電池の電極反応(放電時)
| 極 | 電極材料 | 電極反応式 |
|---|---|---|
| 負極 | Pb(鉛板) | Pb + SO₄²⁻ → PbSO₄ + 2e⁻ |
| 正極 | PbO₂(酸化鉛板) | PbO₂ + SO₄²⁻ + 4H⁺ + 2e⁻ → PbSO₄ + 2H₂O |
| 全体 | 希H₂SO₄が電解液 | Pb + PbO₂ + 2H₂SO₄ → 2PbSO₄ + 2H₂O |
🔥 燃料電池(リン酸型)の電極反応
| 極 | 燃料 | 電極反応式 |
|---|---|---|
| 負極(燃料極) | H₂ を供給 | H₂ → 2H⁺ + 2e⁻ |
| 正極(空気極) | O₂ を供給 | ½O₂ + 2H⁺ + 2e⁻ → H₂O |
| 全体 | — | H₂ + ½O₂ → H₂O(廃棄物は水のみ) |
❌ よくある誤解
電極反応式を見ると、負極(Pb→PbSO₄)・正極(PbO₂→PbSO₄)ともにモル質量の大きい物質に変わっており、質量保存の観点から両極の質量が増えることを確認できる。
乾電池・鉛蓄電池のように内部に反応物を蓄えているのではなく、燃料を供給し続ける限り発電を続けられる点が根本的に異なる。
実用電池には他にも、負極にリチウムを用いるリチウムイオン電池(スマートフォン・EV用、軽量で高いエネルギー密度)や、水酸化ニッケルとカドミウムを使うニッケルカドミウム電池などがある。鉛蓄電池は重量エネルギー密度が低い(重い割に蓄えられる電気量が少ない)一方、安価で大電流を取り出しやすいため自動車の始動用として現在も使われ続けている。発展
✅ この単元のまとめ
- 電池:酸化還元反応 → 電気エネルギー変換;負極で酸化・正極で還元
- ダニエル電池:Zn(負極)/ ZnSO₄ ‖ CuSO₄ / Cu(正極)、起電力 1.1 V(標準電極電位の差から計算可能)
- 一次電池(充電不可):マンガン・アルカリ乾電池など
- 二次電池(充放電可):鉛蓄電池・リチウムイオン電池など
- 鉛蓄電池:放電で Pb, PbO₂ が PbSO₄ に。充電でもとに戻る。両極とも質量増加
- 燃料電池:H₂ + O₂ → H₂O の反応エネルギーを電気に変換。CO₂ 排出なし。燃料供給が必要
理科専門塾 Chem Atlas Academy
調べる力を、得点力に変える塾。
中学・高校・高専生のための、完全オンライン理科専門塾。
授業はせず、月4回のオンライン解説で伴走します。
💡 内容の誤りやご意見はお気軽にどうぞ。
✉️ お問い合わせはこちら