溶液の性質
溶かすと沸点が上がり凝固点が下がるのはなぜ?溶液の不思議な性質を粒子数の観点から理解しよう。
溶解度とコロイド
熱いお茶には砂糖がすっと溶けるのに、冷たいお茶だと溶け残ってしまう。これは、水に溶ける砂糖の量(限界量)が温度によって変わるからだ。逆に、開けたての炭酸飲料を温めるとすぐに気が抜けてしまう。これは気体の溶ける量が温度が高いほど少なくなるためで、固体と気体では温度の影響の向きが逆になる。
また、牛乳や霧、墨汁のように、粒子が細かく散らばって液体中に浮かんでいる状態をコロイドという。牛乳に光を当てると光の通り道が見えたりするのも、コロイド特有の現象である。
一定量の溶媒に溶ける溶質の最大量を溶解度という。固体の溶解度は温度とともに変化し(通常は温度上昇で増大)、気体の溶解度は温度上昇で減少し圧力上昇で増大する(ヘンリーの法則)。コロイドは直径1〜100 nmの粒子が分散した系で、独特の性質をもつ。
🌡️ ヘンリーの法則(気体の溶解度)
| 条件 | 溶解量の変化 |
|---|---|
| 圧力が2倍になる | 溶解量も2倍(一定温度で) |
| 温度が上がる | 溶解量は減少(炭酸が抜ける理由) |
※水 1 L に溶ける気体の物質量 [mol] = (溶解度係数 k) × 分圧 P
🌫️ コロイド溶液の性質
| 現象名 | 内容 |
|---|---|
| チンダル現象 | コロイド粒子が光を散乱して光路が見える(例:霧の中の光線) |
| ブラウン運動 | コロイド粒子が溶媒分子の衝突を受けて不規則に動く |
| 電気泳動 | コロイド粒子が電荷を帯びており、電圧をかけると移動する |
| 透析 | 半透膜を通してコロイド粒子とイオン・小分子を分離する |
| 凝析 | 電解質を加えるとコロイド粒子が集まって沈殿する |
❌ よくある誤解
気体分子は熱運動が激しくなるほど液体から飛び出しやすくなるため、温度が高いほど溶けにくくなる。「あたためたビールの気が抜けやすい」のはこのため。
「イオン・小分子(真の溶液) < コロイド粒子 < 沈殿・懸濁粒子」という大きさの序列で性質が連続的に変化すると捉えるとよい。
コロイドは分散のしかたによって、疎水コロイド(水と親和性が低く、少量の電解質で凝析しやすい)と親水コロイド(水と親和性が高く、多量の電解質を加えないと沈殿しない=塩析)に分けられる。疎水コロイドに親水コロイドを加えて安定化させる働きを持つコロイドを保護コロイドという(例:墨汁中のにかわ)。大学範囲
希薄溶液の束一的性質
冬に道路が凍らないように塩化カルシウムなどをまくことがある。これは、水に何かを溶かすと純水より凍りにくくなる(凝固点が下がる)性質を利用したもの。同じように、水に物を溶かすと沸点は逆に少し上がる。
面白いのは、溶かすものが砂糖であっても食塩であっても、同じ「粒子の数」だけ溶かせば同じだけ凝固点や沸点が変化するということ。何を溶かすかではなく、何個の粒子を溶かしたかがポイントになる。
希薄溶液では、溶質の種類に関わらず溶質の粒子数(モル数)だけで決まる性質がある。これを束一的性質という。蒸気圧降下・沸点上昇・凝固点降下・浸透圧の4つが代表的。
図2:希薄溶液の4つの束一的性質。いずれも溶質のモル数(粒子数)のみに依存し、溶質の種類には依らない。
❌ よくある誤解
束一的性質は「溶質のmol数」ではなく「溶液中に実際に存在する全粒子のmol数」で決まる。電解質かどうかを必ず確認する。
束一的性質はすべて「質量」ではなく「粒子の個数(mol数)」で決まるという共通点をおさえる。
電解質溶液では、溶質1molが電離してi個の粒子になるとすると(ファントホッフ係数 i)、沸点上昇・凝固点降下・浸透圧の式にiを掛けて補正する:ΔTb=Kb×m×i、ΔTf=Kf×m×i、π=iCRT。強電解質(完全に電離)ではiはイオンの数(NaClならi=2、CaCl₂ならi=3)に近づく。大学範囲・入試頻出
🧮 実例計算:ファントホッフ係数を使った計算
| 設定 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| NaCl水溶液 1 mol/kg(i=2)の沸点 | ΔTb = 0.52 × 1 × 2 | +1.04 K → 沸点 約101.0℃ |
| NaCl水溶液 1 mol/kg(i=2)の凝固点 | ΔTf = 1.85 × 1 × 2 | -3.70 K → 凝固点 約-3.7℃ |
| グルコース水溶液 0.10 mol/L・27℃(300 K)の浸透圧 | π = 0.10 × 0.0821 × 300 | 約2.46 atm |
グルコースは電解質ではない(i=1)ため、そのままπ=CRTで計算できる。定数はKb=0.52 K·kg/mol、Kf=1.85 K·kg/mol(いずれも水)、R=0.0821 L·atm/(K·mol)を使用。
✅ この単元のまとめ
- 固体の溶解度:温度上昇で増大(例外:硫酸ナトリウムなど)
- 気体の溶解度:温度上昇で減少・圧力増大で増大(ヘンリーの法則)
- コロイド:1〜100 nm の粒子の分散系(チンダル・ブラウン運動・電気泳動・透析・凝析)
- 沸点上昇:ΔTb = Kb × m × i(水のKb = 0.52)
- 凝固点降下:ΔTf = Kf × m × i(水のKf = 1.85)
- 浸透圧:π = iCRT(ファントホッフの法則)
- 電解質はファントホッフ係数i(電離した粒子数)の分だけ束一的性質が大きくなる
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