固体の構造
金属や塩はどのように粒子が積み重なっているの?実際の結晶データを立体表示しながら、結晶の種類と単位格子の計算を整理しよう。
🖱️ この単元の結晶図はすべてCrystallography Open Database(COD)の実データを3Dmol.jsで描画したものです。ドラッグで回転、スクロールで拡大縮小できます。
結晶の種類と特徴
身の回りの固体を比べてみよう。食塩(塩化ナトリウム)は硬いのに、ちょっとした衝撃でパリンと割れる。ダイヤモンドはとても硬くて傷がつかない。氷は手で簡単に割れて、しかも溶けやすい。1円玉(アルミニウム)はたたくと平たく伸びる。
これらの性質の違いは、固体の中で粒子どうしを結びつけている「力の種類」が違うことから生まれる。中学までは「固体」とひとまとめにされていたが、高校化学ではこれを金属結晶・イオン結晶・共有結合結晶・分子結晶の4種類に区別する。
固体の結晶は、粒子間を結びつける力の種類によって金属結晶・イオン結晶・共有結合結晶・分子結晶の4種類に分類される。結合の種類が結晶の融点・硬さ・電気伝導性などの物性を決める。
🔮 4種類の結晶の比較
| 種類 | 粒子間の力 | 融点 | 電気伝導性 | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 金属結晶 | 金属結合(自由電子) | 中〜高 | 固体・液体でよく伝導 | Na, Fe, Cu, Al |
| イオン結晶 | 静電気力(クーロン力) | 高い | 固体×、液体・水溶液○ | NaCl, CaCO₃, MgO |
| 共有結合結晶 | 共有結合(全体が網目状) | 非常に高い | ほぼ絶縁(黒鉛は例外) | ダイヤモンド, SiO₂, Si |
| 分子結晶 | 分子間力(ファンデルワールス力・水素結合) | 低い | 絶縁体(イオン性分子は例外) | H₂O(氷), CO₂(ドライアイス), I₂ |
❌ よくある誤解
宝石のような大きな単結晶でなくても、粒子が周期的な配列をしていれば化学的には結晶とよぶ。
硬さは「変形のしにくさ」、融点は「熱運動で結合を切るのに必要なエネルギー」で、結合の種類ごとに現れ方が異なる。
結晶は分類上、上記4種類のほかに、原子・分子の配列が周期性を持たないアモルファス(非晶質)という状態もある(ガラスなど)。また同じ元素・化合物でも結晶構造が複数存在する場合があり、これを多形(同質異像)という(例:炭素のダイヤモンドと黒鉛は同素体であり、かつ結晶構造の異なる多形でもある)。大学範囲・発展
金属結晶の単位格子と充填率
八百屋の店先でオレンジを箱に積み上げるとき、ただ縦横に積むより、隙間に少しずらして詰めた方がたくさん入る。金属の中の原子も同じように、決まったパターンで規則正しく積み重なっている。この繰り返しの最小単位を単位格子という。
積み方には何通りかパターンがあり、代表的なのが鉄によく見られる「体心立方格子」と、金や銅によく見られる「面心立方格子」。積み方が違うと、同じ体積の中に原子をどれだけぎっしり詰め込めるか(充填率)も変わる。
金属結晶の繰り返し単位を単位格子という。代表的な格子は体心立方格子(bcc)・面心立方格子(fcc)・六方最密格子(hcp)の3種類。各格子に含まれる原子数と充填率(空間を球が占める割合)を正確に計算できるようにしておく。
🧊 体心立方格子(鉄)・面心立方格子(金)・六方最密格子(マグネシウム)の実際の結晶構造
体心立方格子(bcc)
鉄 α-Fe・格子定数 a=2.87 Å
面心立方格子(fcc)
金 Au・格子定数 a=4.08 Å
六方最密格子(hcp)
マグネシウム Mg・a=3.21 Å, c=5.21 Å
図1:体心立方格子(bcc, 鉄)・面心立方格子(fcc, 金)・六方最密格子(hcp, マグネシウム)の単位格子(Crystallography Open Database実データ)。fccとhcpは充填率が同じ74%だが、原子の積み重ね方(層の並び方)が異なる。回転させて見比べよう。
🧮 単位格子に含まれる原子数の数え方
| 位置 | その格子に帰属する割合 |
|---|---|
| 頂点(角) | 1/8 個 |
| 稜(辺)の中点 | 1/4 個 |
| 面の中心 | 1/2 個 |
| 体の中心 | 1 個 |
bcc:頂点8×1/8 + 体心1×1 = 2個/格子、充填率68%。fcc:頂点8×1/8 + 面心6×1/2 = 4個/格子、充填率74%(六方最密格子も同じ74%で、この2つを合わせて最密充填構造とよぶ)。
❌ よくある誤解
「格子の中に見えている球の数」と「その格子に実際に帰属する原子数」は別物。共有されている割合を必ずかけ算する。
密度=(単位格子内の原子の質量の合計)÷(単位格子の体積)で決まる。原子数の比較だけで密度を判断してはいけない。
単位格子の一辺の長さ(格子定数)a がわかれば、原子半径 r や結晶の密度を計算で求めることができる。原子どうしが最も近い方向で接していると仮定すると、bccでは立方体の対角線(体対角線)上、fccでは面の対角線上で原子が接する。
| 格子 | 原子半径 r と格子定数 a の関係 | 充填率 |
|---|---|---|
| 体心立方格子(bcc) | 4r = √3 a | (√3π)/8 ≈ 0.680 |
| 面心立方格子(fcc) | 4r = √2 a | √2π/6 ≈ 0.740 |
| 六方最密格子(hcp) | a = 2r(底面内で球が接する) | π/(3√2) ≈ 0.740 |
🧮 実例計算:格子定数から密度を求める(鉄・金)
密度 ρ = (単位格子中の原子数 × モル質量) ÷ (アボガドロ定数 × 単位格子の体積)
| 金属 | 格子 | a | 計算値 | 文献値 |
|---|---|---|---|---|
| 鉄 Fe(M=55.85) | bcc(2個/格子) | 2.8665 Å | 7.87 g/cm³ | 7.874 g/cm³ |
| 金 Au(M=196.97) | fcc(4個/格子) | 4.07825 Å | 19.29 g/cm³ | 19.30 g/cm³ |
計算値はρ=(n×M)/(N_A×a³)にCODの実測格子定数を代入して得たもの(N_A=6.02214076×10²³ /mol)。文献の密度とよく一致する。同様に4r=√3a(bcc)や4r=√2a(fcc)から原子半径も逆算でき、鉄は約124 pm、金は約144 pmとなる。
✅ この単元のまとめ
- 結晶4種類:金属・イオン・共有結合・分子(粒子間力・融点・電導性が異なる)
- bcc:原子2個/格子、充填率68%(例:Na, K, Fe)
- fcc:原子4個/格子、充填率74%(例:Cu, Al, Ag, Au)
- 六方最密(hcp):充填率74%(例:Mg, Zn, Ti)
- 充填率 = 格子内原子の体積 ÷ 単位格子の体積 × 100%
- 密度 ρ = (原子数×モル質量) ÷ (アボガドロ定数×単位格子の体積)
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