気体の法則
圧力・体積・温度・物質量はどう関係する?気体の振る舞いを支配する法則を、実際に計算したグラフで、はじめての人から難関大志望者まで使えるレベルで整理しよう。
📍 単元1「物質の状態」2/4ページ:① 三態と蒸気圧 → ② 気体の法則(このページ) → ③ 固体の構造 → ④ 溶液の性質
ボイル・シャルルの法則と状態方程式
登山用のポテトチップスの袋が山頂でパンパンに膨らむのはボイルの法則(周りの圧力が下がると気体は膨張する)、真夏の炎天下で自転車のタイヤの空気圧が上がるのはシャルルの法則(温度が上がると気体は膨張しようとする)——日常の現象の裏には、気体の体積・圧力・温度を結びつける法則がある。
気体の圧力・体積・温度の関係を定量的に表す法則。ボイルの法則は温度一定のときPVが一定、シャルルの法則は圧力一定のときV/Tが一定。両者をまとめると理想気体の状態方程式PV = nRTが得られる。
📈 ボイルの法則(実際に計算したグラフ:1 mol, 300 K)
図1:ボイルの法則(1 mol, 300 K, R=8.314 J/(mol·K)を使いPV=nRTから計算)。PとVは反比例の双曲線になる。
📈 シャルルの法則(実際に計算したグラフ:1 mol, 101.3 kPa)
図2:シャルルの法則(1 mol, 101.3 kPa一定で計算)。絶対温度T[K]に対しVは比例し、原点(T=0K)を通る直線になる。
📐 重要公式まとめ
| 法則・方程式 | 条件 | 式 |
|---|---|---|
| ボイルの法則 | T・n一定 | P₁V₁ = P₂V₂ |
| シャルルの法則 | P・n一定 | V₁/T₁ = V₂/T₂ |
| ボイル-シャルルの法則 | n一定 | P₁V₁/T₁ = P₂V₂/T₂ |
| 理想気体の状態方程式 | — | PV = nRT |
| 気体定数R | 2019年SI改定による正確な定義値 | 8.314462…J/(mol·K)(高校では8.31を使用) |
❌ よくある誤解
「V-Tグラフが原点を通る直線」という性質は絶対温度を使って初めて成り立つ。℃のグラフを見て「原点を通る」と早合点しないこと。
Rが変わるのではなく、PVやnTの方が条件によって変化する。Rは常に同じ値(8.314 J/(mol·K))として扱ってよい。
理想気体の状態方程式PV=nRTは、気体分子運動論(気体を無数の弾性衝突する質点とみなすモデル)から理論的に導出できる。分子の平均運動エネルギーが絶対温度に比例するという関係(3/2 kT、kはボルツマン定数)を用いると、圧力・体積・温度・物質量の関係式が力学的に導かれる。大学範囲(気体分子運動論)
混合気体と実在気体
空気は窒素・酸素・アルゴンなどが混ざった気体だが、全体の圧力(気圧)は、それぞれの気体が「自分だけで容器を占めていたらどれだけの圧力を出すか」を足し合わせたものになる。また、これまで学んできた気体の法則は「理想気体」という仮想的な気体を前提にしており、実際の気体(実在気体)は特定の条件でこの前提から少しずれる。
ドルトンの分圧法則:混合気体の全圧は各成分気体の分圧の和に等しい。各成分気体の分圧は、全体の物質量に対するその成分のモル分率に全圧を掛けたもの。実在気体は分子間力と分子の体積があるため、高圧・低温で理想気体からずれる。
📊 分圧とモル分率
| 量 | 記号・式 | 説明 |
|---|---|---|
| 全圧 | P全 = PA + PB + … | 各成分の分圧の和 |
| モル分率 | xA = nA / n全 | 全モル数に対する成分Aのモル分率 |
| 分圧 | PA = xA × P全 | モル分率 × 全圧 |
⚗️ 実在気体と理想気体のズレ
| 条件 | ズレの方向 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 高圧 | PV/nRT > 1(理想より体積大) | 分子自身の体積が無視できなくなる |
| 低温・高圧 | PV/nRT < 1(理想より体積小) | 分子間引力により体積が縮む |
| 高温・低圧 | ほぼ理想気体に近い | 熱運動が卓越・分子間距離が大 |
❌ よくある誤解
気体どうしは互いにすり抜けて容器全体を満たすため、「窒素はここ、酸素はここ」と体積で区分けされているわけではない。あくまで圧力への寄与分を分けて考えたのが分圧。
2つの効果(分子体積による膨張方向のズレ、分子間力による収縮方向のズレ)は原因が異なり、条件によってどちらが優勢かも変わる。
実在気体のふるまいは、ファンデルワールスの状態方程式 (P + a(n/V)²)(V − nb) = nRT によってより精密に記述できる。定数aは分子間力の強さを、定数bは分子自身の体積を反映しており、a=b=0とすると理想気体の状態方程式に一致する。大学範囲(ファンデルワールスの状態方程式)
✅ この単元のまとめ
- ボイルの法則:T一定 → P₁V₁ = P₂V₂(PVは反比例の双曲線)
- シャルルの法則:P一定 → V₁/T₁ = V₂/T₂(Tは絶対温度、原点を通る直線)
- 理想気体の状態方程式:PV = nRT(R = 8.31 J/(mol·K))
- 分圧の法則:P全 = ΣPi、分圧 = モル分率 × 全圧(体積ではなく圧力を分け合う)
- 実在気体:高圧(分子体積)・低温(分子間力)で理想気体からずれる
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