不飽和炭化水素
C=C の二重結合があると何が変わる?付加反応・臭素水の脱色・プラスチックの製造まで実際の構造式とともに整理しよう。
アルケンとアルキン
果物を早く追熟させるために使われるエチレンガスは、炭素どうしが二重の手(二重結合)で結びついた「アルケン」という仲間の代表格。二重結合は単結合よりも反応性が高く、そこに他の原子がくっつきやすい(付加反応)という特徴がある。
この「反応しやすい二重結合」のおかげで、エチレンから様々なプラスチック(ポリエチレンなど)を作ったり、臭素水を使って二重結合の有無を調べたり(臭素の色が消える)することができる。
アルケン(CₙH₂ₙ)は C=C 二重結合を1つ、アルキン(CₙH₂ₙ₋₂)は C≡C 三重結合を1つもつ不飽和炭化水素。二重・三重結合の部分に試薬が付加する付加反応が特徴的。
🧪 エチレン・アセチレンとその付加反応生成物の実際の構造式
エチレン CH₂=CH₂
C=C二重結合
アセチレン CH≡CH
C≡C三重結合
1,2-ジブロモエタン
臭素付加後の生成物
図1:SMILES(PubChem実データ)から生成した構造式。エチレンにBr₂が付加すると二重結合が単結合になり、両側にBrが1個ずつ結合した1,2-ジブロモエタンが生成する(臭素水の脱色反応)。
⚗️ アルケンの付加反応
| 試薬 | 反応名 | 例 |
|---|---|---|
| H₂(水素) | 水素付加(還元) | CH₂=CH₂ + H₂ → CH₃CH₃(Niやプラチナ触媒) |
| Br₂(臭素) | ハロゲン付加 | CH₂=CH₂ + Br₂ → CH₂BrCH₂Br(臭素の脱色) |
| HCl(塩化水素) | ハロゲン化水素付加 | CH₂=CH₂ + HCl → CH₃CH₂Cl(マルコフニコフ則) |
| H₂O(水) | 水付加(加水分解) | CH₂=CH₂ + H₂O → CH₃CH₂OH(エタノール生成) |
| 高圧・触媒下 | 重合(付加重合) | n CH₂=CH₂ → (−CH₂CH₂−)ₙ(ポリエチレン) |
💧 アセチレン(エチン)C₂H₂ の特徴
- 製法:CaC₂(カーバイド)+ H₂O → C₂H₂ + Ca(OH)₂
- 付加反応:H₂, HCl, H₂O などが付加(2段階起こる)
- C₂H₂ + H₂O → CH₃CHO(アセトアルデヒド)→ 工業的に重要
- 強塩基・アンモニア性硝酸銀溶液と反応 → AgC≡CAg 白色沈殿
❌ よくある誤解
単元3(化学結合)で学んだ多重結合の考え方がここでも活きてくる。多重結合=σ結合の整数倍、という単純な比例では捉えられない。
「主生成物」という表現がある場合、それ以外の生成物も少量存在しうることを示唆している。
アルケンへの非対称試薬(HXなど)の付加はマルコフニコフ則に従う:水素原子は、もともと水素が多く結合している炭素側に付加する(=水素の少ない方の炭素にXが付加する)。これは反応中間体であるカルボカチオンの安定性(より置換基の多い炭素の方が安定)に基づく速度論的な選択性である。大学範囲・反応機構
付加重合と天然ゴム
レジ袋やペットボトルのキャップに使われるポリエチレン、パイプや電線の被覆に使われるポリ塩化ビニル(PVC)…これらのプラスチックは、エチレンや塩化ビニルといった小さな分子(モノマー)の二重結合が次々に開いて手を繋ぎ、鎖のように長く連なることで作られている。この反応を付加重合という。
タイヤに使われる天然ゴムも、実はイソプレンという二重結合を2つ持つ小さな分子が、何千個も繋がってできた天然の高分子である。
付加重合は不飽和結合が次々と付加して高分子を形成する重合反応。天然ゴムはイソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)の付加重合体。合成ゴムも同様の原理。
🧪 代表的なモノマーの実際の構造式
プロピレン
→ポリプロピレン(PP)
塩化ビニル
→ポリ塩化ビニル(PVC)
スチレン
→ポリスチレン(PS)
イソプレン
→天然ゴム
図2:主要な付加重合モノマーの構造式(PubChem実データ)。いずれも二重結合を持ち、この部分が開いて次々と連結することで高分子(ポリマー)になる。
🏭 主な付加重合体
| モノマー | ポリマー | 用途 |
|---|---|---|
| エチレン CH₂=CH₂ | ポリエチレン(PE) | 包装フィルム・容器 |
| プロピレン CH₂=CHCH₃ | ポリプロピレン(PP) | 繊維・容器 |
| 塩化ビニル CH₂=CHCl | ポリ塩化ビニル(PVC) | パイプ・電線被覆 |
| スチレン C₈H₈ | ポリスチレン(PS) | 発泡スチロール |
| テトラフルオロエチレン CF₂=CF₂ | PTFE(テフロン) | フライパンコーティング |
❌ よくある誤解
ゴム弾性は「長い鎖状分子が伸ばされると一時的にまっすぐになり、力を除くとまた絡み合った状態(エントロピーが高い状態)に戻ろうとする」という高分子特有の性質(単元23,24と関連)。
「付加重合=何も失わずにそのまま繋がる」「縮合重合=繋がる際に小分子が抜ける」という違いは、高分子化合物の単元全体を理解する上で重要な区別になる。
天然ゴムのイソプレン単位はシス形(cis)の配置で連結されているため、分子鎖が規則正しく折りたたまれにくく、弾性(ゴム弾性)を示す。一方、同じイソプレンがトランス形(trans)で連結すると、グッタペルカという硬い樹脂状の物質になる。生ゴムに硫黄を加えて加熱する「加硫」処理により、ポリイソプレン鎖どうしが硫黄原子で架橋され、弾性と耐久性がさらに向上する。大学範囲・立体化学
✅ この単元のまとめ
- アルケン CₙH₂ₙ:C=C 二重結合。付加反応(H₂, Br₂, HX, H₂O)が起こる
- 臭素水の脱色:C=C の存在を確認する試験
- アルキン CₙH₂ₙ₋₂:C≡C 三重結合。アセチレン C₂H₂ が代表
- C₂H₂ の製法:CaC₂ + H₂O
- 付加重合:不飽和モノマー → 高分子(PE, PP, PVC など)、副生成物なし
- 天然ゴム:イソプレン(C₅H₈)の付加重合体;加硫(硫黄架橋)で弾性・耐久性が向上
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