飽和炭化水素
メタン・エタン・プロパン…炭素鎖が長くなるにつれ何が変わる?アルカンの性質と石油の利用を実際の構造式とともに学ぼう。
アルカン(飽和炭化水素)
都市ガスの主成分メタン、カセットコンロのガスであるブタン…これらは炭素と水素だけでできた「炭化水素」の中でも、特に安定な仲間であるアルカンだ。アルカンは炭素どうしが全て単結合(1本の手)だけで繋がっているため、化学的に反応しにくく「燃料」として扱いやすい。
炭素の数が1個(メタン)、2個(エタン)、3個(プロパン)…と増えていくにつれて、分子が大きく重くなり、気体から液体、さらに固体へと状態が変わっていく。ガソリンや灯油も、このアルカンの仲間が主成分になっている。
アルカンは C-C 単結合のみからなる炭化水素で、一般式 CₙH₂ₙ₊₂。化学的に安定で、塩素などのハロゲンと光照射下で置換反応(ラジカル反応)を起こす。メタン・エタン・プロパン・ブタンが基本。
🧪 メタンとプロパンの実際の構造式
メタン CH₄
最も単純なアルカン
プロパン C₃H₈
直鎖状
図1:SMILES(PubChem実データ)から生成した構造式。骨格式では炭素・水素原子はほぼ省略されるため、メタンのように炭素1個だけの分子は元素記号Cで表示される。
📋 主なアルカンの一覧
| 名称(英語) | 分子式 | 沸点 | 常温の状態 |
|---|---|---|---|
| メタン(methane) | CH₄ | −161 °C | 気体 |
| エタン(ethane) | C₂H₆ | −89 °C | 気体 |
| プロパン(propane) | C₃H₈ | −42 °C | 気体 |
| ブタン(butane) | C₄H₁₀ | −1 °C | 気体 |
| ペンタン(pentane) | C₅H₁₂ | 36 °C | 液体 |
| ヘキサン(hexane) | C₆H₁₄ | 69 °C | 液体 |
⚗️ アルカンの置換反応(例:メタン + Cl₂)の実際の構造式
クロロメタン CH₃Cl
ジクロロメタン CH₂Cl₂
- CH₄ + Cl₂ → CH₃Cl + HCl(光照射が必要)
- さらに置換が進む:CH₃Cl → CH₂Cl₂ → CHCl₃ → CCl₄
- この反応は連鎖反応(ラジカル連鎖機構)で進む
❌ よくある誤解
「安定=無反応」ではなく、「安定=特別な条件(光など)がないと反応しにくい」と理解する。
「光が必要」という条件は、この反応がイオン反応ではなくラジカル反応であることの重要な手がかりになる。
ラジカル置換反応は「開始・成長・停止」の3段階からなる連鎖反応である。①開始:Cl₂が光により均等に開裂してCl・(塩素ラジカル)が生じる。②成長:Cl・がCH₄からHを引き抜きCH₃・とHClを生じ、CH₃・がCl₂と反応してCH₃ClとCl・を再生する(この段階が連鎖的に繰り返される)。③停止:2つのラジカルどうしが結合して安定な分子になり連鎖が止まる。大学範囲・反応機構
シクロアルカンと石油の利用
アルカンの中には、鎖状ではなく輪(環)の形をつなげたものもある。これをシクロアルカンという。ガソリンスタンドで売られているガソリンや灯油は、実は単一の物質ではなく、鎖状アルカン・環状アルカン(シクロアルカン)などが混ざり合った「石油」を、蒸留(沸点の違いを利用した分離)によって取り出したものだ。
原油を加熱すると、沸点の低い成分(炭素数の少ない軽い分子)から先に気体になって出てくる。この性質を利用して、ガス・ガソリン・灯油・軽油・重油などに分けている。
シクロアルカンは炭素が環状につながったアルカンで、一般式 CₙH₂ₙ。シクロヘキサン(C₆H₁₂)が典型例。石油はアルカン・シクロアルカン・芳香族炭化水素の混合物で、分留によって各成分を分離する。
🧪 シクロヘキサンの実際の構造式
シクロヘキサン C₆H₁₂
正六角形の環状構造
図2:シクロヘキサンの構造式(PubChem実データ)。鎖状アルカン(CₙH₂ₙ₊₂)に比べ、環を作る分だけ水素原子が2個少ない(CₙH₂ₙ)。
🛢️ 石油の分留と主な留分
| 留分 | 沸点範囲 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 石油ガス(C₁〜C₄) | 〜30 °C | LPG(液化石油ガス)・燃料 |
| ナフサ(C₅〜C₁₀) | 30〜180 °C | ガソリン・石油化学原料 |
| 灯油(C₁₀〜C₁₅) | 180〜250 °C | 暖房・ジェット燃料 |
| 軽油(C₁₅〜C₂₀) | 250〜350 °C | ディーゼル燃料 |
| 重油・残渣 | 350 °C〜 | 船舶燃料・アスファルト |
❌ よくある誤解
分留で新しい物質が作られるわけではなく、もとから存在する混合物を成分ごとに「仕分け」しているだけ、という点を区別する。
分子式が同じでも構造が違えば別の物質(単元16の異性体の考え方)。環を作ることと二重結合を作ることは、どちらも「水素原子2個分」を減らす効果がある点で共通している。
ナフサは石油化学工業の出発点であり、熱分解(クラッキング)によってエチレン(C₂H₄)やプロピレン(C₃H₆)などの反応性の高い不飽和炭化水素(単元18)に変換される。これらはプラスチックや合成繊維(単元24,25)の原料となる基幹物質であり、現代の石油化学産業はナフサの分解生成物を起点に成り立っている。大学範囲・単元18,24,25に接続
✅ この単元のまとめ
- アルカン:C-C 単結合のみ、CₙH₂ₙ₊₂;化学的に安定
- 置換反応:Cl₂ + 光 → H を Cl に置き換える(ラジカル連鎖機構)
- シクロアルカン:環状構造、CₙH₂ₙ;シクロヘキサン C₆H₁₂ が代表
- 石油の分留:沸点の差で成分を分離する物理変化(ガス・ナフサ・灯油・軽油・重油)
- ナフサ(粗製ガソリン)は石油化学工業の出発原料(熱分解でエチレンなどを生成)
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