物質の性質と分類
ものの「正体」を見分けるには何を調べればいい?
密度・融点・沸点など、物質固有の性質を使った見分け方と、
物質の分類のしかたを学ぼう。
密度——物質の「重さの詰まり具合」
同じ大きさの箱に、木と鉄を詰めたとき、どちらが重い?答えは鉄。同じ体積でも、物質によって「中身のぎっしり具合」が違うからだ。この「ぎっしり具合」を数字で表したものが密度である。
密度が水より小さいものは水に浮き、水より大きいものは水に沈む。木の板が水に浮くのも、鉄のクギが水に沈むのも、この密度の違いで説明できる。
同じ大きさの箱に、木と鉄を詰めたとき、どちらが重い?当然、鉄のほうが重い。 これは「同じ体積でも質量が違う」から——その違いを数値で表したものが密度です。
図1:同じ体積(例:100 cm³)の物質を比べた場合の密度の違い
📊 代表的な物質の密度(常温・常圧)
| 物質 | 密度(g/cm³) | 常温での状態 | 水との関係 |
|---|---|---|---|
| 木(松) | 約 0.5 | 固体 | 水に浮く |
| 氷 | 約 0.917 | 固体 | 水に浮く(特異) |
| 水 | 1.00(4℃) | 液体 | 基準 |
| アルミニウム | 2.70 | 固体 | 水に沈む |
| 鉄 | 7.87 | 固体 | 水に沈む |
| 銅 | 8.96 | 固体 | 水に沈む |
| 鉛 | 11.3 | 固体 | 水に沈む |
| 金 | 19.3 | 固体 | 水に沈む |
密度が1.0 g/cm³(水の密度)より小さい固体は水に浮き、大きい固体は水に沈む。 氷が水に浮くのは、氷の密度(約0.917)が水より小さいから——身近で重要な例外。
🧮 密度の計算例
体積 40 cm³ の金属のかたまりを量ったら、質量が 108 g だった。この金属は何か?
密度 = 108 g ÷ 40 cm³ = 2.70 g/cm³
→ 表と照らし合わせると アルミニウム とわかる。このように、密度は物質を見分けるための重要な手がかりになる。
❌ よくある誤解
例えば発泡スチロールの大きな箱(密度は小さいが体積が大きい)は、小さな鉄のネジ(密度は大きいが体積が非常に小さい)より重くなることがある。「密度」と「質量(重さ)」は別の量であることに注意。
高校化学では、密度の考え方が結晶構造の学習で再び登場する。金属結晶の単位格子(体心立方格子・面心立方格子など)の中に原子がどれだけ詰まっているかを表す「充填率」の計算には、まさにこの「質量÷体積」の考え方が使われる。高校化学・単元3と関連
📖 高校化学「金属結晶の単位格子と充填率」を見てみる融点・沸点——物質が変わる温度
氷を温めると水になり、水をさらに温めると水蒸気になる。固体が液体になる温度を融点、液体が沸騰して気体になる温度を沸点という。
水のような純粋な物質は、融点・沸点がきっちり決まった値になる。一方、いろいろな物質が混ざった水溶液などは、融点・沸点がぼんやりとした幅を持つ。この違いを利用すると、混ざりものの中身を見分けることができる。
融点とは固体が液体になる温度、沸点とは液体が気体(沸騰)になる温度のこと。 純物質はこの温度が決まっており、混合物は一定でない——この違いが物質の見分けに使える。
図2:純物質は融解・沸騰の間、温度が一定に保たれる(混合物は一定にならない)
🌡️ 代表的な物質の融点・沸点(1気圧)
| 物質 | 融点(℃) | 沸点(℃) |
|---|---|---|
| 水(H₂O) | 0 | 100 |
| エタノール(C₂H₅OH) | −115 | 78 |
| 食塩(NaCl) | 801 | 1413 |
| 鉄(Fe) | 1538 | 2862 |
| アルミニウム(Al) | 660 | 2519 |
| 酸素(O₂) | −219 | −183 |
| 窒素(N₂) | −210 | −196 |
純物質の見分け方:加熱しながら温度を記録する。融解中・沸騰中に温度が変わらない(グラフが水平になる)なら純物質。
混合物は「融点が決まらない」「沸点に幅がある」ため、この方法で区別できる。
高校化学では、沸点は「蒸気圧」という考え方を使ってさらに深く扱われる。液体を密閉容器に入れておくと、液面から蒸発した分子が気体として存在し、その圧力(蒸気圧)が外の大気圧と等しくなった温度が沸点になる——という仕組みまで学ぶ。高校化学・単元1と関連
📖 高校化学「蒸気圧と状態図」を見てみる有機物と無機物
砂糖やデンプン、プラスチックなど、もともと生き物や生き物由来のものに多い物質を有機物、それ以外の食塩や鉄、水などを無機物という。一番かんたんな見分け方は「燃やしてみること」——有機物を燃やすと必ず二酸化炭素と水が出てくる。
物質は大きく有機物と無機物に分けられる。 「燃やしたとき、二酸化炭素と水が出るかどうか」が一番かんたんな見分け方。
🌿 有機物(Organic compounds)
- 炭素(C)を含む化合物(ただし CO₂・CO・炭酸塩など例外あり)
- 燃焼すると必ず 二酸化炭素(CO₂) と 水(H₂O) が生じる
- 例:砂糖・デンプン・エタノール・プラスチック(ポリエチレンなど)・木・食用油
⚗️ 無機物(Inorganic compounds)
- 有機物以外の物質すべて
- 燃やしても CO₂・H₂O は生じない(燃えないものも多い)
- 例:食塩(NaCl)・鉄・アルミニウム・ガラス・水・塩酸・石灰石・二酸化炭素
図3:有機物を燃焼させると CO₂ と H₂O が生じる(燃焼実験)
❌ よくある誤解
中学では「燃やしてCO₂とH₂Oが出るかどうか」で判断するのが確実。これらの例外はいずれも「それ以上燃えない(すでに酸化されている、または炭素を含まない骨格をもつ)」という共通点がある。
高校化学では「有機物」という大きなくくりが、炭化水素・アルコール・カルボン酸・芳香族化合物など、炭素骨格や官能基によってさらに細かく分類される。「有機化合物」という言葉を使い、炭素を中心とした分子の構造と反応性を体系的に学んでいく。高校化学・単元16と関連
📖 高校化学「有機化合物の基礎」を見てみる金属と非金属
鉄のスプーンはピカピカ光り、電気を通し、熱いお湯を入れると柄まで熱くなる。こうした「光る・電気を通す・熱を伝える・たたくと伸びる」という性質をもつ物質を金属、持たない物質を非金属という。
物質(特に固体)を見たとき、「金属かどうか」を見分けるポイントは4つある。 金属は非金属と異なる独特の性質を持ち、その性質が工業・生活に生かされている。
図4:金属に共通する4つの性質(非金属はこれらの性質を持たない)
📋 金属と非金属の比較
| 性質 | 金属(例:鉄・銅・Al) | 非金属(例:プラスチック・ガラス・木) |
|---|---|---|
| 光沢 | ✅ 金属光沢あり | ❌ 光沢なし(例外:黒鉛など) |
| 電気 | ✅ よく通す | ❌ 通さない(例外:黒鉛) |
| 熱 | ✅ よく伝わる | ❌ 伝わりにくい |
| 加工 | ✅ 延ばせる・曲げられる | ❌ もろいものが多い |
| 密度 | 大きいものが多い | 小さいものが多い |
❌ よくある誤解
金属光沢がなく、たたいても薄く延びない黒鉛は非金属に分類されるが、特殊な結晶構造のために電子が動きやすく、電気を通す。「電気を通す=金属」と短絡しないよう注意。
高校化学・化学基礎では、金属のこの性質を「金属結合」という結合の種類として説明する。金属原子どうしが自由電子を共有しながら結びつく結合であり、イオン結合・共有結合と並ぶ結合の1つとして体系的に学ぶ。化学基礎・単元5と関連
📖 化学基礎「金属結合」を見てみる物質の分類まとめ
図5:物質の分類まとめ(純物質と混合物、単体と化合物、有機物と無機物)
✅ この単元のまとめ
- 密度 = 質量 ÷ 体積(単位:g/cm³)で求め、水(1.0 g/cm³)と比べて浮く・沈むを判断できる
- 純物質は融点・沸点が一定で、加熱曲線に水平部分(プラトー)が現れる
- 混合物は融点・沸点が一定にならず、温度が連続的に変化する
- 有機物 = 炭素を含む化合物(燃やすと CO₂・H₂O が生じる)
- 無機物 = 有機物以外(CO₂・CO・炭酸塩など炭素含有でも無機物の例外あり)
- 金属の4性質:金属光沢・電気伝導・熱伝導・展性と延性
- 黒鉛は非金属だが電気を通す、という重要な例外を覚えておく
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