このページのねらい
線形代数は、化学の計測・モデル化・解析を一気に整理してくれる道具です。 このページでは、化学で頻出の 最小二乗(キャリブレーション/スペクトル分離)、 固有値による速度過程の理解、ストイキオメトリ行列と定常流束 を、 行列の目線で直観できるミニツールにまとめました。
配色・枠・表はサイト共通の `unit.css` を使用。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
化学で使う線形代数の考え方
| テーマ | 行列表現 | ポイント | 化学での例 |
|---|---|---|---|
| 連立一次方程式 | A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{b} |
ガウス消去/LU/ピボット | 物質収支の同時解 |
| 最小二乗 | \min_x\|Xx-y\|_2 |
x=(X^TX)^{-1}X^Ty or QR/SVD |
検量線、スペクトルの線形分離 |
| 固有値問題 | A\boldsymbol{v}=\lambda\boldsymbol{v} |
安定性・緩和時間:\Re(\lambda) |
一次反応ネットワークの時定数 |
| 行列指数 | \boldsymbol{x}(t)=e^{At}\boldsymbol{x}(0) |
対角化でモード分解 | 可逆反応 A⇌B の時間発展 |
| ストイキオメトリ | S\boldsymbol{v}=0 |
null 空間=定常流束 | 代謝/反応ネットワーク |
最小二乗1:検量線(Beer–Lambert の直線回帰)
モデル A=\beta_0+\beta_1 c + \varepsilon。X=[\mathbf{1}\; c] に対する β=(X^TX)^{-1}X^Ty と QR 解を比較します。
—
係数と指標(通常方程式 / QR)
最小二乗2:スペクトルの線形分離
既知の基底スペクトル B=[b_1,b_2,b_3] と混合 y≈B c から係数 c を推定(非負制約オプション付き)。
—
速度過程:2状態一次反応 A \rightleftharpoons B(固有値と時間発展)
\dot{\boldsymbol{c}}=K\boldsymbol{c}、K=\begin{bmatrix}-k_1 & k_{-1}\\ k_1 & -k_{-1}\end{bmatrix}。
固有値は 0 と -(k_1+k_{-1})。総量は保存されます。
—
ストイキオメトリ行列 S と定常流束 S\boldsymbol{v}=0
例として種 (A,B,C)、反応 (R1,R2,R3)。R1: A\to B、R2: B\to A、R3: B\to C。
| S | R1 | R2 | R3 |
|---|---|---|---|
| A | |||
| B | |||
| C |
—
nullity = 反応数 − rank。null 空間の基底は「定常流束の自由度」を表します。
練習問題(クリックで採点)
- Q1:最小二乗の解は
x=?((X^TX)^{-1}X^Tyなど) - Q2:数値的に安定なのは(通常方程式 / QR / SVD)のどれ?
- Q3:可逆反応 A⇌B の固有値の実部は正か負か?(正/負/0 を含む)
- Q4:
Sが 3×3 でrank(S)=2のときnullity(S)は? - Q5:スペクトル分離では係数に非負制約を入れることが多い(はい/いいえ)