原子の地図帳 / 第1周期

ヘリウム (Helium, He)

ヘリウム(元素記号 He、原子番号 2)は、周期表で2番目に軽い元素で、希ガス(貴ガス)に分類されます。 常温では単原子の気体として存在し、化学反応をほとんど起こさない「非常に反応しにくい気体」として知られています。 一方で、極低温で液体になると特別なふるまいを見せることがあり、MRI超伝導低温実験など“低温の世界”を支える重要な元素でもあります。

2 常温: 気体
He
Helium
主な形: He / 主な同位体: ⁴He

基本データ

原子番号
2
元素記号
He
元素名
ヘリウム(Helium)
分類
希ガス(貴ガス)
周期 / 族
1周期 / 18族
ブロック
sブロック
標準状態
気体(単原子 He)
標準原子量
4.002602
電子配置
1s2
電気陰性度(Pauling)
—(通常定義されない)
主な酸化数
0
代表的な同位体
⁴He(最も多い), ³He(希少)

注: ヘリウムは「反応しにくい」代表選手です。ここでは暗記よりも、 なぜ安定かなぜ低温で重要かを理解できるようにまとめます。

概要(どんな元素?)

ヘリウムは、原子核に陽子2個を持つ元素で、電子が1s軌道に2個ぴったり入った「閉殻(へいかく)」構造になっています。 このため電子配置がとても安定で、ほとんどの条件で他の元素と結びつきにくい(=化学反応を起こしにくい)という性質を持ちます。

一方で物理的には、ヘリウムは非常に低い温度で液体になり、冷却材として大活躍します。 とくに超伝導磁石を冷やす用途(例:MRIや研究用磁石)では、ヘリウムが重要な役割を担ってきました。

主要な物性(代表値)

項目 値 / 目安 ポイント
常温での状態 気体(単原子 He) ヘリウムは通常He(単原子)として存在します。
融点(1 atm) (なし)※常圧では固化しにくい ヘリウムは常圧では極低温でも固体になりにくく、圧力をかけると固化します。
沸点(1 atm) 約 −268.93 ℃ すべての元素の中でも特に低い沸点で、低温実験の主役級です。
密度(気体・0℃, 1 atm) 約 0.1785 g/L 空気より軽く、風船や浮揚用途に使われます(※水素よりは重い)。
第一イオン化エネルギー(目安) 約 24.587 eV 電子を奪うのがとても難しく、化学的に安定な理由の一つです。
可燃性 不燃(可燃範囲なし) ヘリウムは燃えません。ただし「安全=無条件」ではなく、酸素欠乏に注意が必要です。

ヘリウムの面白さは「反応しない」だけではなく、低温でのふるまい極めて高い安定性が、医療・工業・研究に直結している点にあります。

同位体(³He・⁴He)

⁴He(ヘリウム4)

自然界で最も多い同位体で、原子核は陽子2個 + 中性子2個です。 非常に安定で、地球上のヘリウムのほとんどは⁴Heです。

地殻中で起こる放射性元素の崩壊(α崩壊)で生じる粒子(α粒子)は、正体が「⁴Heの原子核」です。 これが電子を受け取って中性のヘリウム原子になり、地下に少しずつ蓄積する…という流れが、地球上のヘリウム供給に関わります。

³He(ヘリウム3)

原子核は陽子2個 + 中性子1個で、⁴Heに比べて自然存在量がとても少ない同位体です。 物理学の分野では、³Heは極低温の冷却や、特殊な低温現象の研究で重要な役割を持ちます。

「同じ元素でも同位体が違うと、物理的なふるまいが大きく変わる」ことを体感できる代表例の一つがヘリウムです。

化学的性質(なぜ“ほぼ反応しない”の?)

1. 電子配置が「完成」している(閉殻)

ヘリウムは 1s2 で、最内殻がちょうど満たされた状態です。 そのため電子を「渡す/もらう」ことで安定化する余地がほとんどなく、結果として 化学結合を作りにくい(=反応しにくい)という性質が現れます。

2. “化合物がゼロ”ではない(ただし条件が特殊)

教科書レベルでは「ヘリウムは化合物を作らない」と扱われることが多いですが、実際には 極端な条件(超高圧やプラズマ、特殊な低温環境など)では、ヘリウムが関与する状態が報告されることもあります。

ただし日常環境や一般的な化学実験の範囲では、ヘリウムは基本的に不活性ガスとして扱えます。

3. イオン化しにくい(電子が強く束縛される)

ヘリウムは第一イオン化エネルギーが大きく、電子が原子核に強く引きつけられているため、 He+ を作るには大きなエネルギーが必要です。

だからこそ、ヘリウムは反応に巻き込まれにくく、 保護ガス(シールドガス)キャリアガスとして信頼されます。

自然界での分布と生成

宇宙でのヘリウム

ヘリウムは宇宙で非常に豊富な元素の一つで、宇宙初期から多く存在します。 また恒星内部では、核融合の進行により水素からヘリウムが作られることがあり、 星の進化やエネルギー生成と深く関係します。

地球でのヘリウム

地球上のヘリウムは、大気中にも微量にありますが、軽くて逃げやすいため大気に蓄積しにくい性質があります。 一方で地下では、放射性元素の崩壊で生じたヘリウムが長い時間をかけてたまり、 天然ガス田などに一緒に含まれることがあります。

工業的な得られ方(概念)

ヘリウムは「空気から簡単に取り出す」よりも、天然ガス由来として回収されるケースが多いです。 そのため供給は資源・設備・回収プロセスの影響を受け、安定供給が課題になることもあります。

主な用途(どこで使われる?)

  • 低温冷却(液体ヘリウム):超伝導磁石(MRI、研究用磁石)などを冷やします。
  • 風船・飛行船:軽くて不燃のため、浮揚用途に使われます(安全面で水素より有利)。
  • 保護ガス(シールドガス):溶接や材料プロセスで、反応性の高い雰囲気を避けたいときに用います。
  • リーク検査:小さな分子(原子)で漏れを検知しやすく、装置の気密検査に使われます。
  • 分析(キャリアガス):ガスクロマトグラフィーなどで利用されることがあります。

安全性・取扱いの考え方

ヘリウムは不燃で化学的に安定ですが、最大の注意点は酸素欠乏です。 密閉空間でヘリウムが漏れると、空気中の酸素が薄まり、窒息リスクが生じます。

また液体ヘリウムのような極低温では、凍傷急激な体積膨張など、低温特有のリスクもあります。

学習メモ: 「危険/安全」ではなく、何が危険要因で、どう管理するかを分解して考えるのが基本です。

歴史と科学史での位置づけ

ヘリウムは、最初に太陽のスペクトルから存在が示唆された元素として有名です。 「地球で見つかる前に、天体観測で“先に発見された”」という点がとてもユニークです。

のちに地球上でも検出され、希ガスの理解が進むことで、元素周期表や原子構造の理解が深まりました。 また低温物理の発展とともに、ヘリウムは「低温を作るための鍵」になっていきます。

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